東洋医学・スピリチュアルと科学から考える喉の不調
今日は、いつもとは少し違ったお話をしてみたいと思います。
皆さんは、「忙しい時期になると喉が痛くなる」「仕事がひと段落した途端に風邪をひく」「強いストレスが続いた後に、扁桃腺が腫れる」そんな経験はありませんか?
一般的に、喉の痛みや扁桃腺の腫れは、ウイルスや細菌などが喉の粘膜に侵入し、免疫反応によって炎症が起こることで生じます。これは西洋医学的に説明できる部分です。
ただ今回は、そこから少し視点を変えてみます。
東洋医学や、いわゆるスピリチュアルの世界では、

「喉の不調は、言いたいことを我慢している時に起こりやすい」
「自分の気持ちを表現できていない時に喉に症状が出る」
などと言われることがあります。
もちろん、これは医学的に証明された考え方ではありません。「言いたいことを我慢したから扁桃腺炎になる」という因果関係が確認されているわけでもありません。
そのため今回の記事は、いつものように医学や栄養学だけを扱う記事とは少し違います。スピリチュアルな考え方が苦手な方は、ここで読むのをやめていただいても大丈夫です。
反対に、「そういう身体の見方も面白い」「東洋医学や心と身体のつながりには興味がある」という方には、少し面白い内容かもしれません。
あくまでも信じ込みすぎず、
「こんな身体の見方もあるんだな」
くらいの参考として読んでみてください。
そもそも扁桃腺は、なぜ腫れるのでしょうか?

まずは普通の医学のお話からです。
私たちの喉の奥には「扁桃」と呼ばれる組織があります。扁桃は単なる喉の一部ではなく、鼻や口から入ってくるウイルスや細菌などを監視する、免疫システムの一部です。
特に口蓋扁桃は「粘膜関連リンパ組織」と呼ばれる免疫組織であり、外から入ってきた異物を認識して免疫反応を起こす場所のひとつです。
つまり喉は、身体の中でもかなり「外界に近い免疫の最前線」と考えることができます。
そこへウイルスや細菌などが侵入すると、免疫細胞が反応します。炎症性サイトカインなどの情報伝達物質が放出され、血流が増え、免疫細胞が集まり、血管の透過性も変化します。
その結果、赤くなる、熱を持つ、痛くなる、むくむ、扁桃が大きくなるといった、いわゆる「炎症」が起こります。
ですから、医学的に見れば扁桃腺が腫れている状態とは、まずは「その場所で免疫反応が起こっている状態」と考えるのが基本です。
東洋医学では「喉」だけを見ない
一方、東洋医学では少し身体の捉え方が違います。
東洋医学では、ひとつの症状だけを見るのではなく、
「身体全体が現在どのような状態なのか」
という視点で考えていきます。
例えば喉の腫れや痛みでも、熱感が強いのか、乾燥しているのか、痰があるのか、疲労が強いのか、胃腸の調子はどうなのか、睡眠状態はどうなのかなどによって見方が変わります。
また東洋医学では、精神的なストレスによって「気」の巡りが乱れるという考え方もあります。現代の医学とは用語も概念も異なりますが、「精神的な状態と身体の状態を完全に別々のものとして扱わない」という点は、とても特徴的です。
| 視点 | 喉の不調の捉え方 |
| 西洋医学 | ウイルス・細菌、粘膜炎症、免疫反応などを中心に考える |
| 東洋医学 | 熱・乾燥・疲労・体力・気の巡りなど、身体全体の状態から考える |
| スピリチュアル | 自己表現、感情の抑制、言いたいことを我慢することなどと関連づけて解釈する |
当然ですが、この3つは同じものではありません。特にスピリチュアルな解釈については、医学的な診断や治療の代わりになるものではありません。
ただ、ここからが今回ちょっと面白いところです。
「言いたいことを我慢すると喉に出る」と言われるのはなぜ?
スピリチュアルな世界では、喉は「自己表現」と関係する場所として扱われることがあります。
そのため、言いたいことを言えない、自分の本音を抑えている、嫌なことを我慢し続けている、周囲に合わせ続けているといった状態が続くと、喉に不調が現れる、と説明されることがあります。
もちろん、「発言を我慢したことで扁桃に炎症が起こる」という生理学的な仕組みが確認されているわけではありません。
しかし、「言いたいことを我慢している」という部分を、「長期間にわたって心理的ストレスを受けている」と言い換えるとどうでしょうか。
ここまで来ると、少し西洋医学との接点が見えてきます。
ストレスは脳だけの問題ではありません

ストレスというと、「気持ちの問題」と考える人も多いと思います。しかし実際には、ストレスを感じた時、身体の中ではかなり大きな生理学的変化が起こっています。
脳がストレスを認識すると、交感神経系と、HPA軸と呼ばれるシステムが動きます。
HPA軸とは、視床下部 → 下垂体 → 副腎皮質という一連の経路です。このシステムが働くことで、副腎からコルチゾールが分泌されます。同時に交感神経系では、ノルアドレナリンやアドレナリンなども関与します。
これらは、危険な状況を乗り切るためには非常に重要な反応です。短時間であれば悪いものではありません。
問題になる可能性があるのは、この状態が長期間続いた場合です。
慢性ストレスでは「免疫力が下がる」だけではない

よく、「ストレスがかかると免疫力が下がります」と言われます。もちろん間違いではありませんが、実際の仕組みはもう少し複雑です。
近年注目されているもののひとつが、「グルココルチコイド受容体の感受性」です。
コルチゾールには、本来、必要以上に炎症が広がらないように調節する働きがあります。つまり炎症の「ブレーキ」のような役割も持っています。
ところが慢性的なストレス状態では、一部の免疫細胞でコルチゾールに対する反応性が低下する「グルココルチコイド抵抗性」が生じる可能性が報告されています。
2021年のシステマティックレビューでも、慢性的な心理ストレスと、グルココルチコイド受容体の感受性低下や炎症性バイオマーカーの増加との関連が示されています。
つまり慢性的なストレスでは、
「免疫が単純に弱くなる」というよりも、「免疫や炎症を適切に調節する仕組みが乱れる」と考えた方が近い場合があります。
例えば炎症に関与するNF-κBなどの経路と、コルチゾールによる炎症抑制のバランスが変化すれば、感染した時の炎症反応にも影響する可能性があります。
ここは非常に興味深い部分です。
ストレスがある人ほど風邪をひきやすい?

心理ストレスと上気道感染症の関係については、以前から多くの研究があります。
2020年に発表され、2021年に掲載されたレビューでは、健康な成人に風邪やインフルエンザのウイルスを曝露させ、その後発症するかを調べた研究群がまとめられています。
その中では、慢性的な心理ストレスが強い人ほど、ウイルス曝露後に呼吸器感染症を発症するリスクが高い傾向が報告されています。
もちろん、「ストレスを感じる=必ず風邪をひく」という意味ではありません。
感染症は、病原体への曝露量、睡眠、栄養状態、喫煙、運動習慣、基礎疾患、年齢、免疫状態など、さまざまな要因によって左右されます。
しかし、「心理状態も感染症へのかかりやすさを左右する要素のひとつになり得る」ということです。
ここまでをつなげると、少し面白いことが見えてきます
では、最初の「言いたいことを我慢すると喉に出る」という話に戻ってみます。
スピリチュアル的には、言いたいことを我慢する → 自己表現ができない → 喉に症状が出る、と説明されることがあります。当然、このルート自体は医学的に証明されていません。
しかし西洋医学の言葉に置き換えるなら、次のような仮説的な流れは考えることができます。
| 心の状態から身体まで | 西洋医学的に考えられること |
| 本音を言えない・我慢が続く | 慢性的な心理ストレスになる |
| ストレスが長期間続く | HPA軸・交感神経系が繰り返し活動する |
| ストレス反応が慢性化 | コルチゾールや自律神経、免疫細胞の反応性が変化する可能性 |
| 免疫調節が乱れる | 炎症のブレーキとアクセルのバランスが変化する可能性 |
| ウイルスなどに曝露する | 上気道感染症を発症しやすくなる可能性 |
| 扁桃で免疫反応が起こる | 赤み・痛み・腫れなどが現れる |
こう考えると、「感情が直接、喉を腫らしている」わけではありません。
しかし、「長期間ストレスを抱えていることが身体の生理機能に影響し、その結果として感染症や炎症が表面化しやすくなる」という考え方であれば、完全に突拍子もない話ではなくなります。
「精神神経免疫学」という分野があります
実はこうした「心と免疫」の関係を研究している学問があります。それが、「精神神経免疫学(Psychoneuroimmunology)」です。
少し難しい名前ですが、心理状態、脳、自律神経、ホルモン、免疫、これらがどのように影響し合っているのかを研究する分野です。
昔は、「心は心」「身体は身体」という考え方が強かったかもしれません。しかし現在では、心理的ストレスが自律神経やホルモンを介して免疫細胞の働きにも影響することが分かってきています。
だからこそ、「ストレスを減らしましょう」という言葉も、単なる精神論ではありません。身体のコンディションを整えるという意味でも重要になってきます。
不調になってからではなく、「その前」に整える

今回一番お伝えしたいのは、実はここです。
多くの人は、喉が痛くなってから休む、風邪をひいてから栄養を意識する、疲れ切ってから睡眠を増やすという順番になりがちです。
しかし、コンディショニングでは、「不調になる前にどうしておくか」が非常に重要です。
仕事が忙しくなってきた、睡眠時間が減ってきた、人間関係でストレスを感じている、食事が適当になっている、最近なんとなく疲れが抜けない。こうした段階で、睡眠時間を確保する、食事量や栄養バランスを見直す、適度に身体を動かす、休む時間を意識的につくる、自分なりのストレス発散方法を持つといったことをしておく。
これだけでも、身体への負担は変わってきます。

特にストレスが多い時ほど、食事まで減らしたり、睡眠時間を削ったりしてしまう人もいます。しかしストレス時には身体の中でもさまざまな代謝や生理反応が起きています。
だからこそ、そんな時期ほど「身体の材料」をきちんと入れておくことが大切です。
タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを含め、まずは基本的な食事を崩さないこと。そして適度な運動や散歩などで身体を動かし、睡眠を確保する。
特別な健康法を始めるよりも、こうした基本の方が大切なことも少なくありません。
体調を崩すと「楽しい時間」まで失ってしまう
体調を崩すことの問題は、単に数日間つらいことだけではありません。
せっかくの休日なのに出かけられない。楽しみにしていた旅行をキャンセルする。友人との食事に行けない。仕事の予定を変更しなければならない。
そんなこともあります。
体調は、崩して初めて大切さに気づくことが多いものです。
だからこそ、「まだ症状がないから大丈夫」ではなく、「最近ちょっと無理しているな」という段階で身体を整えておく。
これは、とても大切なコンディショニングの考え方だと思います。
まとめ|喉だけではなく、今の自分全体を見てみる

「言いたいことを我慢すると喉が腫れる」という考え方を、そのまま医学的事実として捉えることはできません。扁桃炎や喉の腫れの多くは、感染や炎症など医学的に説明される原因によって起こります。
ただし、長期間の心理ストレスが自律神経、ホルモン、免疫、炎症調節などに影響することは研究されています。
だから喉が腫れた時、「何か言いたいことを我慢しているのかな?」と考える必要はありませんが、「最近きちんと眠れていたかな」「かなり無理していなかったかな」「食事が乱れていなかったかな」「ストレスを溜め込んでいなかったかな」と身体全体を振り返ってみるのは悪くないと思います。
東洋医学でも、西洋医学でも、そして少しスピリチュアルな見方でも。最終的に大切なのは、「身体が出ているサインに早めに気づくこと」なのかもしれません。

不調が出てから慌てて整えるのではなく、調子が良い時から身体を整えておく。普段の食事、運動、睡眠、休養、そしてストレスとの付き合い方。
そうした毎日の積み重ねが、結果的に一番のコンディショニングにつながっていきます。
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堀越 準矢(管理栄養士・健康運動指導士)
管理栄養士・健康運動指導士として、運動・栄養・整体を組み合わせた健康づくりをサポート。企業や自治体で年間100回以上の健康セミナーや栄養・運動指導を行い、肩こり・腰痛予防、高齢者の健康づくり、生活習慣病予防など幅広いテーマで活動しています。
「運動だけ」「食事だけ」ではなく、一人ひとりの生活に合わせた無理なく続けられる健康習慣を提案することを大切にしています。
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